国産チーズを語る(栃木県 今牧場編)

多少なりとも私と親交のある方、インスタやツイッターを見てらっしゃる方はもう知っているかもしれないけど、私はナチュラルチーズが大好物である。

しかも大酒飲みなので、とにかくチーズとワインが無いと生きていけない。しかも無駄に美食家なので、品質の良いモノ以外は口にしない。金が掛かって仕方がない。

新宿伊勢丹地下のチーズショップは各国の良質なチーズを置いている為、毎度此処にお世話になっている。此方のご紹介もしたいところだが、本日のテーマは国産チーズなので割愛する。

 

何故国産チーズについてブログを書こうと思ったのかというと、「国産チーズ」というワードで検索すると「国産チーズ まずい」とかのサジェストが出てきてしまうので、世の中で国産チーズの実力が正当に評価されていないという懸念が生じた為である。また、ワインやチーズはTPPで関税の削減・撤廃が定められている品目であるので、今後生産量が多く安価な輸入品により国産チーズ産業は苦境に立たされる恐れもある。

確かに、日本のナチュラルチーズの歴史はそう深いものでは無い。そもそも酪農自体の歴史が浅い。特にウォッシュやシェーブル、青かびのチーズなんてのは元々日本人には食べ慣れていないものであるから、苦手な人も多い。食べる人が少ないから、開発もされてこなかった。そもそも、棲んでいる細菌叢がヨーロッパと日本では違うのだから、熟成させてもヨーロッパで評価される様な商品を作るのは難しいだろう。

フレンチのコースを日常的に食べ、ヨーロッパのナチュラルチーズに親しんだごく一部のリッチなチーズ愛好家はロックフォールやリヴァロといった癖の強いものを好みがちだから、日本人向けに癖の無い味に開発された国産チーズでは物足りないというのもあるのだろう。

しかし、だからといって国産チーズが美味しくないと即断するのは誤りである。

まず、モッツァレラやリコッタ等、新鮮さが命のフレッシュチーズの類は輸入品ではどうしても味が落ちる。極端な話、これらのチーズは作った瞬間からどんどん味が落ちていくのだ。これらの点では、国産チーズ側に地の利がある。

また、日本人の多くは癖の強いウォッシュ(表面を酒や塩水で洗って熟成させたチーズ。リヴァロなど強烈な刺激臭を放つものが多い)やシェーブル(山羊乳のチーズ。獣臭いものが多い)、青かびチーズを食べ慣れていない為、国産チーズ工房は日本人でも抵抗なく食べられる商品開発を行っている。なので、初心者でも安心してナチュラルチーズを愉しむことが出来る。

更に、輸入物のチーズの中には、驚くほどアンモニア臭が酷かったり味が悪いものも多々混じっている。現在信頼できる輸入業者を見つけてからはそういうのには当たっていないが、どうやら輸送や品質管理がいい加減で味が落ちてしまったらしい。国産チーズは何処も品質管理・輸送の点では信頼できるのが良い所だろう。

 

そんな訳で、今日のテーマは「国産チーズ」

私が食べてきたチーズの中で間違いなく激ウマな逸品をご紹介したい。初回は、我が地元栃木県のチーズ工房「今牧場」である。

http://ima-farm.com/

今牧場は那須町にある牧場兼チーズ工房である。日本では数少ない、山羊のチーズを生産する工房である。

私も以前訪問したことがあるが、とにかく牧場内が綺麗で環境がいい。チーズと一緒に牛乳を購入したが、こちらもかなり美味しかった。牛も山羊も大切に飼われているのがよく分かる。以下、その時に購入したチーズを紹介する。

 

茶臼岳(熟成シェーブルチーズ)

https://ima-cheese.com/item/20190723/

シェーブル、つまりは山羊のチーズ。

日本では馴染みが無く、山羊独特の臭みがあるのでシェーブルは余程のチーズマニアにしか人気が無いそうだ。だが、シェーブルに抵抗のある人もこの茶臼岳だけは食べてみてほしい。山羊の臭みがほとんど感じられず、ミルクのコクと滑らかな舌触り、山羊乳独特の爽やかな酸味、熟成した旨味に陶然とする。私も都内の有名なチーズショップで高価なシェーブルを何種類も食べてきたけど、そのどれよりも美味しい。滅茶苦茶美味しい。間違いなく、今まで食べた中で一番美味しいシェーブル。

これがゴロンと大きいサイズで二千円なんだから驚きである。チーズに二千円というと高いと感じる人も多いかもしれないが、茶臼岳に匹敵する品質の輸入シェーブルなら三倍はしてもおかしくないだろう。安い。美味しくて高品質なのに安い。チーズの形からして、フランスのヴァランセに近いのだろうけど、ヴァランセで此処まで美味しいのは少なくとも日本では食べたことが無い。

熟成した旨味のある商品なので、国産の軽め辛口の赤ワインと合わせると美味しい。

なお、生産量に限りがあり、生産できる時期にも限りがあるので、見つけたらお早目の購入をお勧めする。

 

ゆきやなぎ

https://ima-cheese.com/item/yukiyanagi/

牛乳のフレッシュチーズ。お値段の割にめっちゃ量が多い。本当に多い。

新鮮なミルクの甘味が本当に美味しい。それだけでもうデザートになる。やっぱりフレッシュチーズは国産に限る。新鮮さが命なのだ。ジャムを添えて朝食にぴったり。

冷ややっこの様に食べたり、日本酒や焼酎とマリアージュすることもおススメだとか。

塩入りのものも販売されている。こちらはサラダに散らしたりクラッカーに乗せて食べたりしたら美味しいと思う。

 

朝日岳

https://ima-cheese.com/item/asahidake/

非常に珍しい、山羊乳のフレッシュチーズ。

山羊独特の獣臭はあるものの、爽やかな酸味とミルクの甘味で、山羊乳の美味しさをそのまま楽しめる。山羊を飼育している牧場だからこそ作れる逸品。

ベリー系のジャムを添えても良いが、私は無花果の白ワイン煮を添えて食べるのが一番好き。冷やした白ワインを合わせるのが美味しい。ダージリンアールグレイの紅茶と合わせるのも美味しい。贅沢な朝食。

山羊乳は牛乳より消化がいいのでお腹を壊しにくいのも良い。

 

しののめ

https://ima-cheese.com/item/shinonome/

表面を塩水で洗って熟成させたウォッシュタイプ。

ウォッシュタイプは色々と凄惨な臭いのするものが多いが、国産品は大体食べやすい臭いに抑えられているので安心してほしい。ちなみにこれはめっちゃ納豆の匂いに似てた。納豆の匂いのチーズ。かなり一口目はビビる。でもそこまで臭いはきつくなくマイルドなので抵抗なく食べることが出来た。味は物凄く美味しい。ミルクの甘味が前面に押し出され、コクと旨味が口の中に広がる。食感はもちもちしてて食べやすい。

ウォッシュチーズはどれもミルクの甘味が濃いけど、これは相当美味しい部類だと思う。赤ワインと合わせるのもいいけど、納豆っぽい臭いがするので、ビールや日本酒でも美味しく頂ける。

 

色々と紹介してみたけど、とにかく言いたいことは国産チーズは美味しいってことだ。あと、栃木はとてもいいところだ。チーズを捜しに旅行に来てみるのもどうだろう。

今牧場のチーズは、栃木県内の道の駅や通販サイトでも購入できる。見つけた人はラッキーだ。